中小企業のなかには、借入を実にうまくやる経営者がいる。
銀行の使い方がうまいのだが、その内容は、いたって簡単
だ。
銀行を儲けさせているのだ。
無駄に金利交渉をするのではなく、銀行にとって多少おい
しくなる金利(利息を多く出しておく)で融資を引き出し
ていた。
もっとも、このような経営は稼げる経営ができていれば問
題ないが、私が在籍していた企業では問題を起こした。
利益があがらなかったため、慢性的にキャッシュが不足し
ていた。
大きな理由のひとつに取引先からの入金が 3カ月先なのに、
仕入れ先への支払いが 1カ月となっていたので単純な資金
ショート経営もあった。
私は、このような実態を把握したので、仕入先に支払サイ
トの変更を丁寧にお願いした。
多少時間がかかったが、大口の仕入先から支払サイトの変
更をしてもらったので資金繰りの問題は解決した。
それでも経営内容に問題があり、利益率が低く、将来の事
業展開を考えると、いかに販売価格を上げるかという営業
施策が求められた。
社員は優秀だった。
事業展開を修正しながら、利益が上がる体制を構築してい
き、現在に至っている。
首にされた経営者だから尊敬できないが、借入のうまさだ
けは絶妙でまねできない。これも人間性だろうか。
だからだろう、社員が優秀なことも相まって、現在でも生
き延びている。