日常的な仕事において組織で発生する不正を上へ報告すること
は、むずかしいものだろう。
理由は、そのような機能が組織にない会社がほとんどだろうか
らだ。あったとしても形骸化している。それが日本企業の特徴
だ。
内部通報制度は欠陥だらけだろう。
下手に利用して報告しようものなら、不正の報告者が孤立させ
られたりする。
不正を見つけても、どこへいえばよいか、ということから考え
なければならない。しかも、不正に対する認識が甘い企業では、
そもそも従業員が不正を告発することなど無理な話なのである。
そのようなことをすれば、逆に干さるだろう。
これまでの不正発覚とその対応をみていればよくわかる。
私が、わざわざ言うまでもない。
では、どうするか。
ソニーの内部監査室のように現場に対して、毎期徹底した監査
をおこなうことだろう。
内部監査室に人的投資をしている。
当然、そのためのお金も相当な額がかかっているだろう。
他の企業で、このような監査機能をもっている話を、私は聞い
ことはない。
もちろん、他にも内部監査室に権限を与えて実効性ある監査を
している企業はあるのかもわからない。
あるのなら事例の紹介をすればよいだけだ。
だが、今でも企業の不正が続いているということは、監査に実
効性がないということを証明している。
また、社外取締役となんなのだろうか。
それにしても、次の内容(===以下)を読んで失笑してしま
う。わが国の内部統制の限界をみるようだ。
社外取締役の役割は、その他の取締役や執行役員が、会社内部
の論理を優先してしまい、株主にとって不都合な意思決定をし
ないか、より客観的な立場から経営判断を行うことだとされて
いる。
さて、現実はどうか。
いろいろな不正の前にとても社外取締役が機能しているとは思
えない。
経営における業務執行を真摯に考えている代表取締役であれば、
自らの業務執行に対して、組織内の不正などが発生しないよう
に内部監査機能を構築し、実効性あるものにしようとするだろ
う。当然、人的投資を実行する。
それなくして監査などできるはずがないからだ。
だが、これもやらない。
理由も簡単だ。
これまでの日本企業の組織的(人的)な慣習だ。
そして不正は組織内部で溜まっていき、ある日、突然爆発する。
すぐに不正は報道される。
この繰り返しをやっているだけだろう。
本来、不毛な議論などいらいのだ。
ただ、代表取締役の業務執行のために、代表取締役が実効性あ
る内部監査機能を設けるだけだ。
これほど簡単なことができない。
取締役会でできることなどたかが知れている。
社外取締役が就任している企業で、なぜ不正がおこなわれるの
だろうか。
よく考えれば、誰でもわかるはずだ。
学校の成績が悪かった私でもわかる。
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「最初は誰かがおかしいと思っていたかもしれません。でもそ
の声を組織の上の人間がきちんと吸い上げず、そのおかしい状
態が常態化してしまうと、もう誰もおかしいと思うことができ
なくなってしまいます。そこへ他から別の人がやってきて、『こ
れはおかしい』と指摘しなければ、ずっと分からないままです。
人間、同じ価値観に染まってしまうともう分からないものです」
(「月刊監査役」 2018年 5月号に収録された日本監査役協会
・正副会長座談会より )
「経営者が全社的な視点でリスク評価を行って、その結果を取
締役会に報告して、リスク評価の妥当性、リスクの見落としが
ないかなどの議論を徹底的に行うというプロセスを明確化する
ということが重要だと考えております。そのようなプロセスを
経て、リスクの高いテーマを選定して内部監査を実施して、内
部統制体制を構築する必要があるのではないかと思います」「
リスク評価の際に重要なのは統制環境だと思います。社内で自
由に意見交換ができる環境なのか、トップが内部統制の重要性
を分かりやすい言葉で発信しているか、不正が発生しやすい環
境になっていないか、あるいはなっていると現場が感じたとき
に自由 闊達な議論ができる雰囲気があるか、そういった下の声
が通る環境であるか。結局は、トップが透明性高い改善策を説
明するということができているか。こういう意味での統制環境
が大変重要だと思います」「訂正報告書を出しました、これで終
わり、翌年は不備ありませんでした、で済むとは思えないので
す。済まないのであれば、その翌年も同じように、今度は改善
をどういうふうにしたか、内部統制体制をどうやって整えたか、
もっと具体的な記述を要するのではないでしょうか」
(2022年 10月 13日の金融庁の企業会計審議会内部統制部会会
合 )
<監査役の矜持より抜粋>