私が転職で経験した企業では、雇い入れ時の健康診断をして
いたのは、新卒で入社した企業とソニー子会社だけでした。
他の企業では、従業員の健康など気にしていなかったという
ことでしょう。
株式公開を目指す企業では、直ちに改善しましたが、それ以
外は、費用がかかるためやりたがりませんでした。
経営者は、どこも渋々でしたが、私が入社した以上、やるべ
きものはやっていただきます。
もっとも、入社しても社員がすぐに退職するため、やる気力
を失っていた経営者もいるのですが、それでも違法なものは
違法です。
労働基準監督署の臨検などでは、健康診断は必ずチェックさ
れます。
そもそも法定健康診断とは、労働安全衛生法に基づいて事業
者に義務付けられている定期健康診断です。
雇い入れ時と年に1回、すべての労働者に対して実施する必
要があります。
定期健康診断の項目は、労働安全衛生規則第44条で定めら
れており、次のようなものがあります。
既往歴や業務歴の調査
自覚症状や他覚症状の有無の検査
身長、体重、視力、聴力の検査
胸部X線検査
血圧の測定
尿検査(尿中の糖や蛋白の有無の検査)
貧血検査(赤血球数、血色素量)
健康診断の費用は、労働安全衛生法により全額会社が負担す
る必要があり、健康保険は適用されません。
そのため医療機関によって従業員一人につきおよそ5,000~
15,000円ほどの費用がかかるでしょう。
健康診断を実施しないと50万円以下の罰金刑が科されるリス
クがあります。また、健康診断を実施してもその情報を外部
へ漏洩した場合は、罰金刑に加え6ヶ月以下の懲役が科され
ることがあります。
法律上義務付けられている健康診断を正しく実施し、異常所
見があった場合は放置せず、医師の意見を聴いて、必要な対
応をすることが重要です。
会社は従業員の雇入れ時及びその後1年以内ごとに1回の一
般健康診断を実施することが義務付けられています 。
特定業務従事者は6か月に1回の一般健康診断が義務付けら
れています。
会社は、健康診断の結果を把握し、異常所見があった従業員
については、健康診断から3か月以内に健康保持のために必要
な措置について、医師の意見を聴くことが義務付けられてい
ます。
(労働安全衛生法66条の4、労働安全衛生規則51条の2)
従業員に異常所見があれば、病院を受診させたうえで、就業に
問題がないかどうか、就業にあたって配慮するべき点がないか
を確認することになります。そして、医師の意見を踏まえて、
業務の軽減や就業時間の短縮などの措置をとることが義務付け
られています。
(労働安全衛生法66条の5 )
心臓や脳血管の異常所見については、過労死につながる恐れが
あり、特に注意が必要です。そのような社員がいれば、社員の
健康状態を配慮した勤務形態で対応します。
大手企業では、きちんとした対応がなされていますが、問題は、
中小企業です。
人手不足が深刻になってきます。中小企業ほど、これまで以上
にリスクが高まることは間違いありません。
労災上乗せ保険などは、確実に付保しておく必要があります。
これからの中小企業経営は、厳しくなるばかりです。
大手企業でも大変な時代を迎えていますが、中小企業ほど、経
営の覚悟が問われる時代になっています。
私が知る経営者は、このことを十分理解されています。