従業員が横領などの問題を起こしたとき、結局いくら請
求できるのか、ということになります。
判例では、社員が出向先で起こした不法行為の損害について
出向元が出向先に支払った4500万円のうち2000万円
を請求したところ、身元保証人の責任を 200万円としたも
のや1億 300万円あまりの損害について身元保証人の責任
を4100万円あまりとしたものがあります。
結構幅があります。
全体的な傾向としては、3割程度に責任範囲を限定するもの
が多く、ほとんどは損害額の5割以下となっているようです。
使用者としては身元保証人にはあまり期待できないと考えて
おいたほうがよいでしょう。
この背景には、次のようなことがあります。
労働者の監督に関する使用者の過失の有無、いわば会社側に
は落ち度はなかったのか、という管理責任が考慮されます。
さらに、身元保証人が保証をするに至った理由が、たとえば、
むりやり身元保証人を引き受けさせられた、というような事
情ある場合もあり、その経緯を考慮して責任を求めるという
こともあります。
身元保証人が保証をするときの注意の程度もあり、身元保証
人がその責任を引き受けた場合、どのようにリスク等を認識
して引き受けたのかを考慮されます。
労働者の業務または身上において、保証の対象となる労働者
がどんな業務に携わっているのかも考慮されます。
たとえば、はじめからお金を扱う部署なのか、それとも異動
によってお金を扱う部署で仕事をするようになったのか、と
いう点によっては、損害発生のリスク等が変わってきます。
その他の事情では、会社側で保険に加入することで損害を担
保しているなど業務上必要な対応を怠っていなかったか、と
いうことも考慮されます。
実務では、身元保証人と話し合い保証人が支払いができる範
囲を確定して和解し、その後和解内容に基づき、一括支払い、
あるいは分割支払いによって回収していきます。
しかし、途中で支払いが途絶えたような場合、それ以降の支
払いを求めることは、身元保証人の行先が不明になったり、
あるいはわかった場合でも回収には多くの手間がかかり、ま
して訴訟をしても回収できないことがほとんどでしょう。
こうしてうやむやに終わってしまうケースが多いものです。
やはりこのようにならないための経営管理が必要です。
このような状況になる企業は、経営管理がそもそもできてい
ません。
経営は長い時間軸で動いていくものです。だからこそ、基本
が必要となります。