「現金・預金」の動きを確認することは重要です。理由は、稼
いだお金から税金を払える体力がある企業を判断するためです。
現金や預金がほとんどないような会社は、自転車操業のような
ものでしょう。
また「現金・預金」というのは、水増しなどの粉飾がしにくく、
あまり誤魔化しがきかないからです。
ただし、この「現金・預金」の額は、1年分の貸借対照表を見
ただけでは、それが妥当な数字かどうかはわかりません。
理由は、現金や預金の妥当な残高というのは、企業によってか
なり違うからです。現金仕入れなどが必要な業種や、人件費の
多い業種は、常に多くの現金を持っておかなければならないし、
仕入れのほとんどが買掛金で、人件費もそれほど多くないよう
な業種では、現金残高は少ない場合もあるからです。
また企業によっては、現金や預金を持ちたがらない場合があり
ます。現金や預金というのは、企業にとっては「寝ている金」
であり、お金を現金や預金で持っておくのはもったいないと思
う経営者も多いのです。
大手企業でもこのようなケースはたまにみかけます。
余分なお金があれば、常に有価証券を買ったり、土地を購入し
て、手元の現金や預金が少ないという場合があります。
このような理由から単年度の「現金・預金残高」を見るだけで
はなく、その推移を見ることが必要になります。
たとえば粉飾しているような企業では、業績が急速に悪化して
いれば、「現金・預金」の残高が急激に減少していく傾向があ
ります。それだけお金が会社から出ていくので、現金や預金に
如実に表れるからです。
このような会社は、業績の悪化を隠すために架空の売上を計上
して、売掛金としていることが多いと思われます。
カネボウは、私が営業で在籍していた時代に多角化をおこない
好業績企業だといわれていましたが、カネボウは、長期間に及
ぶ粉飾決算を重ねて、最終的に破たんしました。
カネボウの粉飾は、長い間、外部に気づかれていませんでし
た。しかし、カネボウの決算書は、粉飾を示すサインをいくつ
か発していました。
「現金・預金」の激減でした。
もっとも、オリンパスの粉飾のように現金・預金を多額に
もっている場合もありますから、現預金だけだ判断できるわけ
ではありませんが、中小企業の経営では、よく注意しておくべ
き点です。
経営者は売上に目がいきますが、現金・預金の残高をチャック
しておくことは、経営者の大事な仕事のひとつです。
企業が成長しているとき、意図的な操作を加えなければ、現金
・預金の残高は増加していきます。