決算書のなかでも怪しい数字が表れるのが「売掛金」です。
企業が粉飾をする手口のなかで、もっとも多いものです。
売上を簡単に水増し計上できるからです。
売上を水増し計上した場合、実態がないのですからどうしても
売掛金が膨れ上がってきます。
粉飾決算を繰り返していたカネボウも水増しに売掛金が利用さ
れていました。現金・預金や受取手形の数値は粉飾されて
いませんでした。一方、売掛金だけは膨張しています。売掛金
の数字を書き換えて粉飾していた古典的な手口です。
売上金は、一旦、売掛金に計上され、代金として受取手形をも
らったときには受取手形に計上されます。現在では、受取手形
をもらうよりは、売上金は、振込まれることが多いでしょう。
受取手形をもらった場合でも現金化した場合、「現金・預金」
に計上されます。受取手形や現預金は、その額が正しいかどう
かはすぐに確認できます。
現金は、帳簿と現金の数を確認すればよいだけです。預金は、
銀行の残高証明書で確認できます。もっとも、残高証明書は、
偽造されることがあるので注意が必要です。
他方、売掛金の残高が正しいかどうかは、なかなか確認できる
ものではありません。売掛金というのは、商品やサービスをお
客様に引き渡した後、まだ代金や手形などをもらっていない状
態の売上です。つまり、先に商品 やサービスを相手に渡してあ
る状態のことです。
売掛金は、取引関係にあるものが約束しただけであり、手形や
現金などの現物はありません。もちろん取引関係というのは、
口約束ではなく、契約書を交わしたり、請求書や納品書を発行
しているので、証拠がないわけではありません。しかし、契約
書や請求書などは、簡単に偽造することができます。
仮に、税理士や会計士が、請求書などを本物かどうか確かめる
ためには、取引先すべてに確認することが必要になります。
企業が粉飾をおこなう場合、売上の水増しをした場合ですが、
その売上は、とりあえず売掛金として処理します。売掛金にし
ておけば、外部に水増しが発覚することが少ないからです。そ
のため、売掛金が急増しているような企業には十分な注意を払
っておく必要があります。