競業避止義務は、退職後に同業他社に就職しない、または、
在籍していた会社の事業と競合する事業を自ら起こさないといっ
た内容の義務を負うことをいいます。
簡単に言えば、会社と約束していることに関しては、退職後も
裏切りません、ということです。
会社によって具体的なやり方は異なりますが、退職する労働者
に対して競業避止義務を負わせる就業規則の規定をおいている
企業もあれば、誓約書を取り交わしている企業もあります。
問題は、この約束やきまりが有効かどうかです。
会社側の立場から言えば、このような義務を負わせる必要性が
あることは否定できないでしょう。
重要な企業秘密が漏洩することは、企業の死活問題となります。
しかし、同業他社に就職できないというのも、やはり再就職し
ようという労働者にとっては、これまでの経験をいかした就職
活動ができないことになり、非常な困難を強いられることにな
ります。
大げさに言えば、職業選択の自由を害するおそれがあるもので
す。このような観点から、競業避止義務の規定があっても、当
然にその通りの効果が認められるのではなく、有効と認められ
る範囲は限定的なものになり、その合理性が認められるような
場合でなければなりません。
仮に、年数が長期にわたるものであれば、労働者に与える不利
益が大きすぎることになります。
現在の判例 では、その期間が2年という短期間の定めであった
こと、在職中、機密保持手当が支給されていたことなどを挙げ、
競業避止義務の規定を有効としているものがあります。
仮に2年といった期間制限がなければ、競業避止義務の規定自
体が無効となるリスクがあり、注意が必要なところです。
この競業避止義務で問題となる点ですが、そもそも機密情報の
管理ができていないのが日本企業です。
とくに中小企業では、誰でも情報にアクセスができ、機密情報
以前の管理状態になっていました。
そのような管理で情報を持ち出されたといったところで、弁護
士や裁判所は相手にしてくれません。
経営者が機密情報だと認識しているのなら、相応な対応が必要
となります。その管理コストと情報を持ち出され利用されるコ
ストを天秤にかけて判断することになります。
とくに中小企業で多いのが、取引先リストを持ち出されること
です。
経営者が重要と考えるのであれば、きちんとした管理が必要で
す。また、取引先に対して普段からしっかりとした営業活動が
できていれば、新参者に得意先を奪われることもないでしょう。
このような方法で顧客を奪う人間は、だいたい価格で勝負して
くるものです。この点だけは注意を払っておくことが求められ
ます。