多くの会社では、「所定労働時間労働した場合に支払われ
る通常の賃金」という方法で賃金支給する方法を採用している
と思われます。
この場合、有給休暇取得日について欠勤控除しないことにより
対応できるケースがほとんどです。
ただし、仕事内容や勤務時間に応じて手当等を支給している会
社では、有給休暇取得日に支払う「所定労働時間労働した
場合に支払われる通常の賃金」にその手当等が含まれるのかど
うかをめぐってトラブルになることがあります。
裁判例の中には、運送会社のドライバーが車両乗務日に普通車
両手当を支給している会社の場合、この普通車両手当を有給休
暇取得日も支払う必要があるかどうかが問題になつたものがあ
ります。
裁判所は、仮に、出勤すれば車両に乗務することが大部分であ
るという実態があったとしても、年次有給休暇取得日は車両に
乗務していないのだから、年次有給休暇取得日の賃金に普通車
両手当分を含めることを要しないとしています
東京地判平成29年6月22日
この裁判例では、深夜勤務したドライバーに深夜勤務手当も支
給されていましたが、この点についても、裁判所は有給休暇取
得日のシフトが深夜勤務に該当する場合でも、有給休暇取得日
は実際には深夜勤務をしていない以上、年次有給休暇取得時の
賃金に深夜勤務手当分を含めることを要しないとしています。
このように仕事内容や勤務時間帯に応じた手当等を支給してい
る会社では、有給休暇付与日について支給する「所定労働時間
労働した場合に支払われる通常の賃金」の計算方法について疑
義が生じる可能性があります。
そのため、賃金規程において、有給休暇取得日についても手当
分の支給対象の有無など、有給休暇付与日の賃金の計算方法を
具体的に定めておく必要があります。
大手企業の場合は、このような点をもれなく賃金規程に網羅し
ていますが、中小企業では曖昧なまま運用していケースが散見
されますが、賃金関係を慣習的に運用したままにしていると、
とんでもない事態になることがあります。
企業を成長させていこうと考えている経営者は、このような点
を明確にしていく努力をしています。
企業を成長させるためには、何事においても体制を構築してい
くことが求められます。
その前提のうえに、どこに独自性を求めるかは、経営者の経営
能力ということになるのです。