早期退職優遇制度を実施する場合、その実施を予告すべきかが
問題となったことがありました。
日本テキサス・インスツルメンツ事件です。
企業は、既に早期退職制度の実施を決定していたにもかかわら
ず、それを知ることなく自ら退職の意思表示をした事案ですが、
退職に意思を表明した後に早期退職優遇制度の実施を知った労
働者が、それについて不服を申し立てたケースです。
裁判所は、もっと早くいってくれれば、有利な早期退職優遇制
度を利用できたという気持ちは理解できますが、判例は、早期
退職優遇制度の実施を決めたからといって、それを直ちに従業
員に告知する義務はないとしました 。
退職の意思表示自体が、本人の当時の状況を適切に踏まえてな
された以上、早期退職優遇制度を知らなかったということが、
勘違いなどの問題があるということにはならないとされていま
す。大枠で言えば、早期退職優遇制度については、企業側に広
い制度設計の自由が認められており、労働法の分野では珍しく、
企業側に有利な判断だと言えるでしょう。