損害賠償の予定という制度がありますが、契約違反がある
と、損害賠償問題が起こります。そのため企業間では賠償の対
象となる損害の範囲や金銭評価について争いとなることが少な
くありません。お互いに納得できなければ、訴訟になって、双
方が弁護士を立てて長期の紛争状態となることもあります。時
間と費用もばかになりません。
契約違反の場合、法的には債務不履行といいますが、賠償すべ
き損害額を一定の金額として定めておこうという場合がありま
す。
私たちの生活では、商品の配送時の破損などで、補償は3万円
までといった記載がされていることがあります。
実際に生じる損害は大きい場合、あるいは小さい場合があるか
もしれませんが、あらかじめ取り決めておいた額で処理してし
まうということを約束するものです。
たとえば、労働者派遣契約において「途中で一方の都合で契約
を打ち切る場合には、派遣料3カ月分を支払うものとする」と
いうことなどが考えられます。
このような対応をすることで紛争が長期化することが避けるこ
とができ、債務不履行になったら、契約時に取り決めた金額を
支払わなければならないということが明確で、契約上の債務を
確実に履行しようという契約履行の意思が強く働きます。
契約時の損害の設定額が重要ですが、損害がわずかしか発生し
なくても、当初約束した金額が支払われることになります。
反対に、損害額が拡大しても、当初の損害額で済ませなければ
なりません。
ところが、損害賠償の予定について 、労働基準法は禁止規定を
置いています。「使用者は、労働契約の不履行について違約金
を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」
(労基法第16条 )
労基法がこのような規定を労働契約で取り決めるのを禁止した
のは、労働者の縛り付けになるおそれがあるからです。損害賠
償の予定が恐くてやめるにやめられないといったことになるか
らです。
このような契約は、どのような名称を使用しているかは問いま
せん。結論からすれば「自分が問題を起こした場合には、会社
にお金(賠償)を支払わなければならない」といった契約をす
れば違法となります。
ただし、損額額の予定をしていなければ違反になりません。
実務上の具体例では、営業職に多いのですが、たとえば、営業
などで一定のノルマを課し、それが達成できなければペナルテ
ィとして一定額を徴収するといったケースがあります。
このような規定は、違法とされる可能性が高いといえます。
中小企業では、たまにみることがありますが、経営者は、この
ような違法な縛りをおこなって従業員を拘束してはなりません。