大手企業などでは、子会社や関連会社、あるいは外部の機関な
どへ出向することが度々あります。出向命令を命じるには、出
向命令権(人事権)の根拠が必要です。出向命令権の根拠とは、
労働契約上の根拠ということです。
企業では対象となる労働者の契約内容を確認することになりま
すが、労働契約に関しては、労働契約書(通常は就業規則です
が)を確認しても労働契約の中身が確定できないことです。
理由は、労働者を拘束する契約が複数あるからです。まず、労
働者の待遇等に関して労働協約(企業と労働組合間の合意です)
と労働契約に矛盾がある場合は、労働協約が優先されます。
原則、その効力は労働組合の組合員にしか効力は及びません。
また、就業規則も、事業場の労働者の労働条件を統一するとい
う機能があり、一定の範囲ですが、労働契約に優先するとされ
ています。さらに、規定のような条文に落とし込めない労使慣
行が具体的な労働条件を定める役割を果たしています。
労働協約、就業規則、労働契約、労使慣行によって個々の労働
者の具体的な労働条件が決まっていきます。これらの規定や慣
行などによって出向を命じる根拠があればよいことになります。
これらの規定(契約)によって出向を命じ得ること自体が明確
になっており、出向先における基本労働条件等が明確になって
いれば、契約上、出向命令権の根拠があるといえます。企業は、
この根拠によって出向命令を命じ得るということになるのです。
それぞれの規定(契約)の優先順位は、次のとおりです。