大手企業で成功した人間が、大手企業を飛び出してベンチャー
経営へ踏み出すことは多くあるようだ。
だが、どういうわけか、失敗する。
私が実際にみてきたベンチャー経営者は、大手企業で成功経験
があることが、ベンチャー経営で失敗する原因だ、と思われた。
大手企業出身者がベンチャー経営へ踏みだす理由は、自己の可
能性を信じているからだ。頭の中で描いた絵が、大手企業のな
かで成功したイメージとオーバーラップするのだと思う。
とくに大手企業出身者は、事業計画などの絵を描くことがうま
い。年中企画書を出していろいろな事業へ挑戦しようとするか
らだ。しかも、成功していれば事業部門の責任者となり、なか
には取締役へ昇進していた人間がいた。
そのような能力がある人間ほど自分の可能性にかけてくる。し
かも事業計画など絵を描くのがうまく、ベンチャーキャピタル
などから多額の出資を得やすい。
私がみてきたベンチャー経営者は、1社は約150億円、もう
1社は約11億円の出資を得ていた。
両経営者とも自信満々だった。
ベンチャーキャピタルは、事業の中身など理解していない。多
くは経営者の経歴に応じて出資しているようなものだ。取締役
会で議論することもなく、常に経営者を信じて顔色をうかがっ
ていた。ところが、大手企業出身のベンチャー経営者ほど危な
いものはない。
大手企業内での成功は、多くのリソースを得たうえで成功して
いるのであって、本人の力だけで成功しているわけではない。
他方、ベンチャー経営では、大手企業と同じようなリースはど
こにもない。
絵にかいた餅を追いかけていた。成功するはずがなかった。
新電力事業で話題なっていたパネイルは、株式会社ディー・エ
ヌ・エー 出身で、同社の有名ゲームであるモバゲーの立ち上げ
に携わった人物が起業していた。大手企業出身、有名国立大学
卒、大手企業での成功体験など、どれをみても成功する香りば
かりだっただろう。
しかし、実態がない事業だった。株主の上位はベンチャーキャ
ピタルや金融機関だった。だが、あっという間に事業は行き詰
まり民事再生法を申請した。最終的な資産価値は2円だ。
ほぼ実態がない経営がされていたことが証明されたようなもの
だ。
大手企業出身者の起業には注意が必要だ。大手企業内の成功は、
あくまで大手企業のリソースを活用した成功だからだ。
プレゼン能力と、事業を成功へ導く能力とは別物だ。
日本のベンチャーキャピタルほど信頼できない存在もない。
これは私が経験した2社の話だが、私はこれらベンチャー経営
者の経営能力をまじかにみて驚くほかなかった。私が退職した
後、1社は労務問題を起こし、労働組合が結成されたが、しば
らくして倒産した。もう1社も業績悪化から事業売却をして事
業は終了した。
私は短い期間みただけでが、実態がない危ない経営だった。ま
た、いろいろな指摘をしたが、経営者は自信満々で聞く耳をも
たなかった。
これは真実の話だ。