中小企業では、大手企業から振出された手形をもらうことは、
しばしばある。大手企業が振出した手形といえども裏書(中
小企業が保証することになる)をして、自社の仕入などに利
用している。また、銀行で受取手形を割り引いてもそれが不
渡りになれば、銀行がリスクを負うわけではなく、手形を受
取った中小企業がその不渡手形を抱えなければならなくなる。
所詮、銀行はなんのリスクも取らない。
創業経営者は、安易に手形取引をおこなわなかった。もっと
も、BtoCの取引だから、大手企業と取引することもなく約束
手形をもらうこともなかったが、自社の仕入れの支払いは、
すべてキャッシュだった。
社員の給与水準も高かったが、実力主義が徹底されていた。
やはり稼ぐ力がある企業は、安易に手形取引に手を出したり
しなかった。当然のように無借金経営をおこなっていた。
資金繰りで悩むこともなく、販売活動に注力していた。また、
販売した商品から売上を回収する仕組みもきちんと構築され
ていた。万全の体制で事業を進めていた。
この経営者の年齢は、当時、36歳だった。世の中の常識に
染まることなく、独自の路線を構築し、優れた利益を上げて
いた。
辛い時代もあったと聞く、だが、それでも借入や手形の使用
を避けてきた、と話していた。
足腰が強い経営だ。若いときから物事の本質を理解すること
に優れた人だったのだろう。
今も悠々自適な経営だ。
常に、自らに厳しい経営姿勢を求める人だった。