良いものを作れば売れるというのは幻想にすぎません。卑近な
例で言えば、ソニーが作ったビデオのベータ方式とJVCが作っ
たVHS方式です。あるいは、パソコンのマックとWindowsがあ
ります。技術的に優れた製品が必ず売れるわけではありません。
そこにプロフィットセンターとしての顧客(人間)の存在があ
るからです。
ベンチャー企業や中小企業では、この事実を理解することがな
かなかできません。ゲームも、基本的には技術追求型の製品で
すが、その作りにこだわり、むしろ対象の顧客層を絞ることに
なり、市場を狭めているケースがよくありました。
優秀な経営者や技術者がいる企業ほど、自社の存在価値を狭め
ていることを、私は、しばしば目にしました。
製品やサービスは、可能な限り広く多くの顧客に届くほど、商
品力がつき、消費者に認められることになります。
唯我独尊的な考え方をするよりは、多くの社員を巻き込んで顧
客が購入してくれる視点で製品開発やサービスを考えていくこ
とが重要になります。
小さな企業ほど総力戦が必要になる理由です。一人の優秀な経
営者や人材の存在だけで発展する企業を、私はみたことがあり
ません。むしろ、このようなケースでは、どの企業も破綻しま
した。一人の経営者の限界が、どのタイミングで露呈するかだ
けでした。優秀な経営者ほど、このわなにはまります。視野が
狭いのです。市場に対する感度が低いとも言いかえることがで
きます。
ソニー子会社時代のように社員を活用する企業が成功を収めて
いきます。理由も簡単です。経営とは普通の社員たちで、普通
以上のことをやりとげることだからです。なにもむずかしくあ
りません。経営者が社員を活用しがら、顧客の要望を把握し、
分析し、自社の創意工夫ができるかどうかだけです。
私には、とても凡庸な経営者にみえるのですが、経営の結果を
みると、その非凡さがよくわかりました。