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利益

中小企業ほどもっておかなくてはならない視点

前にも書きましたが、利益の源は、あくまで顧客であり、製品
ではありません。他方、会計の仕組みをみると、多くの企業で
は、製品別に利益を管理していました。顧客別に利益を管理し
ていた企業を私はみたことがありません。ソニー子会社時代で
も、同様でした。

なぜ、企業は、製品別に利益管理をしているのでしょうか。販
売の基本は、安く仕入れた商品を高く売ることです。まず、い
くらで商品を仕入れたか、そして製品や商品をいくらで売った
かであり、その結果いくらの利益が出たかを計算しています。
利益を商品や製品ベースで把握することは、最も原則的なこと
であり、自然な流れでもあります。また、計算上も容易に利益
を計算できます。

さらに制度上の影響を受けているという課題もありそうです。
上場企業は、 1991年3月期決算から、有価証券報告書にセグメ
ント情報を開示することが義務付けられました。このことが、
製品別というセグメントで企業が利益を把握することになった
要因のひとつだろう、と私は想像しています。

このような制度があるからと言えども、制度は、制度設計する
国などの都合で作られるものです。しかし、本来経営マネジメ
ントをおこなっていくうえで、企業が、国などが決めた基準で
利益を的確に把握できるかどうかは、各企業自らが考えるべき
ことです。
もっとも、経営者は経営効率を考えますから、企業独自に利益
を把握するために、会計システムを二重に構築することは、コ
ストが発生し、余程の理由がない限り実行することはないでし
ょう。

このような開示制度の義務化の影響を受けて、利益の源泉は製
品だという考え方が、意識的かどうかは別として、企業におけ
る基本的な管理運用の意識となっているのではないでしょうか。
ところが、会計には 二つの考え方があります。
ひとつは、制度的な決算(国が一定のルールに基づき運用させ
る強制的な力がある)を目的にした財務会計があります。
財務会計は、会社法第431条における「株式会社の会計は、一
般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」
という定義に従わなければなりません。
会計といえば、普通は財務会計を指しています。

もう一つが管理会計です。こちらは、企業における経営管理の
ための会計です。管理会計は、企業が自社で自由に考えて、そ
の仕組みを主体的に構築することが可能です。自社にとって、
もっとも重要な視点で経営管理をおこなうことができます。利
益を顧客別に把握することも自社の経営にとって有効であれば、
それを前提に管理ができる仕組みを作ればよいだけです。

管理会計は経営管理のための会計ですから、企業経営において、
当該企業が何を重視しているかということが大事になります。
いわば経営思想であり、企業の価値観といえるでしょう。
自社の利益の源泉が顧客だとすれば、管理会計は顧客別に利益
を把握し、管理していくことが基本となります。
管理会計の仕組みを作っていく場合でも、本来、自社の創意工
夫をしておくことが大切なわけですが、その理由は、利益の源
泉が企業の存立を決定していくからです。

とくに上場企業ではない中小企業ほど、なにが自社の利益の源
泉となっているかを明確にしなければなりません。また、利益
の内容を真摯な姿勢で把握する努力をおろそかにしてはなりま
せん。利益こそが、経営の継続を可能とする本質的な要因だか
らです。

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