中小企業が黒字化を達成しても、次の課題に直面します。規
模の問題です。私が在籍していた会社は、当初 2 5 0人程度の
社員数でしたが、その後、事業会社を買収したことで、すぐ
に500名規模になりました。いろいろな矛盾を抱えることに
なりましたが、経営者は、人の意見をよく聞く方でしたから、
私は率直に意見を述べました。
そのひとつは、買収した事業会社を別会社化することでした。
私が在籍していたときは、まだ実行できませんでしたが、そ
の後、経営者は、別会社化を実行し今日につながっています。
組織機能というものには、その特性が必ずあります。その特
性をうまく活用しながら組織化を進めていくことが必要です。
従来からある高額なものを販売する部門は、今日まで社員数
を大きく拡大することをしていません。理由も簡単です。
組織には、統制規模の限界があるからです。
経営というのは、このような切り分けが必要になります。な
んでもやみくもに拡大すればよいのではありません。
急激に規模を拡大すると、仕事内容における質の面で問題が
出てくることは否めません。
チーム制は、利益を拡大させる会社には向きますが、規模の
拡大には慎重さが求められます。実際、同じような事業で失
敗する企業が多く、規模の拡大に問題があった、と想像され
ます。
独立採算型のチーム組織では、他チームの助けを借りずに、
すべ てを自分のところだけで販売を完結させようとする力
が働きます。他チームと協力しながら販売していたのでは、
販売のタイミングを失い失注してしまいます。
規模を拡大するためには、チーム制を廃止し、業種別の組織
とサービス別の組織にするといったマトリクス型組織を導入
する必要がでてきます。戦略立案から始まり、業務プロセス
の変革、組織の変革、 I Tの導入などで対応していくことに
なります。
事業を拡大する場合、それぞれの組織にどのような機能をも
せるか、そしてどのように運営すかが問われてきます。
経営者には、経営能力が試される挑戦となります。中小企業
から大企業へ変化させていくにも、多くの要素を把握しなが
ら、自ら考えて、工夫を凝らしていかなければなりません。
私がみてきた範囲ですが、やみくもに事業を拡大する経営の
多くは、失敗に終わりました。