製造業における固定費の考え方は、生産現場と販売部門では違
っていることが多いもです。生産現場では、製品の単位当たり
原価は、総コストを生産量で割って計算します。総コストのな
かで、固定費は生産量に関係なく、固定的に発生しますから、
生産量が大きければ大きいほど、製品一単位が負担する固定費
の割合は小さくなります。このことが、大量生産による固定費
が下がるという現象です。
ところが、大量生産によって、単位当たりコストは確かに下が
りますが、総コストは必ず増えていきます。理由は、たくさん
作れば、それに対応して材料費などの変動費が多く消費され、
その分のコストが増えるからです。
固定費総額は固定された額なのですから、固定費が削減される
わけではありません。計算上の製品一単位当たりの固定費の負
担額が減るだけです。大量生産によってコストが下がる、と言
いますが、この場合の下がるとは、単位当たりのコストであり、
総コストはむしろ増えていきます。
ここで言っている単位当たりの生産コストとは、生産量一単位
当たりのコストですから、間違っても販売量一単位当たりのコ
ストでありません。
生産量を増やせば、計算上、単位原価は減るのですが、製造現
場の社員たちは、売れるかどうかの判断をすることなく、目標
生産数量に対して行動していきます。
生産したが、売れ残ってしまい廃棄処分をおこなえば、その時
点で初めて費用として計上されます。実際の経営では、その時
点で判断するには遅すぎます。
生産したものが売れなければ、廃棄費用として認識される前に、
すでに資金繰りが悪化し、倒産する可能性があるからです。
生産現場と販売部門との連携がなければ、現場は生産一単位当
たりのコストを追い、販売現場は、販売が不調な場合、在庫と
して製品が残るため、生産当時予定していた生産量一単位当た
りのコストが、予定していたコストを大きく上回るリスクが常
にあるため、生販の連携は、とくに中小企業では重要になりま
す。